2009年6月30日 (火)

不思議なともし火

Dvc40290  美術館でも画廊でもそうですが、
絵は、明るいところで見るのが当たり前です。
そうしないとカラフルな絵がカラレスになりますから。

でもこの6月末に開かれた
「TOKYO MiLKY WAY」は、
そんな常識を吹っ飛ばしてくれました。

「私達は、東京都心で銀河を観られるように、
ネオンで覆われた街に美しい光を取り戻すような
豊かなライフスタイルを提案します」
という「100万人のキャンドルナイト 2009夏至」
は、環境ボランティア系の催しのようですが、
銀座でも、燈した蝋燭の灯で画廊の絵を見る企画として実現、
もう何回もやっているんだそうです。

 私は、銀座1丁目のギャラリーツープラスの画廊主に、
「引率する人間が足りないからやってくれないか」と
誘われて、参加することになりました。

 昔の西洋・中世では、教会の中の美術品を
蝋燭の灯で見ていたということですから、
暗闇に灯を燈して見るということは、ふつうに行われていたのでしょう。

 考えてみれば、見る側の見方や気持ちや価値観を
絵の中に織り込んで、それを美術史として発展してきたのが西洋美術でしょうから、
もし、蝋燭で彩度の落ちた絵を個性的に描けば、
新しい画風になるかもしれない、そんな想像もできる企画でした。

 昔の西洋人は、夜、蝋燭の燈された教会を出れば、
真っ暗闇の空には天の川がかかっていたでしょう。
中世の絵はみなキリストの物語でしたから、
夜空に横たわる川と教会のキリストの絵と蝋燭は、
死後の世界や神と結びついて、人々の信仰と切り離せないものになったでしょう。

 蝋燭で見た銀座の絵には、天の川と信仰が足りませんが、
かつての演出効果を楽しめるすてきな夜になります。
「ボランティア」と「キリスト教」は結びついているんでしょうから、
東洋の果てにやってきたキャンドルナイトに、
こういう効果が出るのは「必然」なのかもしれませんが。

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2008年11月30日 (日)

文化の値段

Dvc30245  「ラーメンやチョコレートのように、同じものを何回も消費するのとは違って、本は1回読んだらおしまい。これじゃ勝負にならない」と新思索社の小泉社長が言っていました。
なるほど。
だから出版業界の売上は2兆円、食品は80兆円…。

 それでも本も、大量生産の工業製品です。
現代の印刷・製本・流通システムが支え、上場している出版社もある。

では、絵は?

 写真は、今年2008年11月2日の日曜日、文化の日(の前日)の文化の様子です。
上の写真は神保町の古本市、そのすずらん通りに新刊出版社もデミセを出し、
写真右の小泉社長も、ちょっと寅さんみたいないでたちですが、本を売っていました。
そこそこ売り上げもあったそうです。

Dsc_0053  同じ日のもう1枚の写真(下)は、銀座の泰明小学校で開かれた「あおぞらDEアート」。
賛同した銀座の画廊が出展、作家さんも多数、来ていました。

 絵は、世界にただ一つの作品。
多品種少量生産でもなく、ただの一品。
平積みしてある本とは違い、また
CDやネットで大量にコピーを販売する音楽とも対照的に、
まったくの一品入魂です。

 ま、それはそれで高く売ればいいのかもしれませんが、
本当にいい絵かどうか、実のところは分からない。
つまり、その高さが腑に落ちない。

 ということで、最近のメガネの値段のように、
はじめに全国一律の定価をつけてはいかがでしょう。
5千円の絵、1万円の絵、3万円の絵。
3千円以下と、5万円以上の絵は、自由に値段をつける。
5千~3万のレンジの絵は、その価格の価値があるということを画廊(画廊組合)が保証して保証書を絵の裏に貼り付ける。

 そうすれば中古市場もできてくる。
飽きたら売ればいいし、
買う方も、これは元々は1万円の絵だけど、中古で6千円。
まー、4千円も得したわ。
1万2千円するけど、人気が出てきたのね、みたいな。

 音楽CDだって、新譜はだいたい一律3000円。
強気のミュージシャンは、1枚のCDの曲数を減らせばいい、みたいな。
これが最初から2万円のがあったりしたら、不安でなかなか買えません。

 いかがでしょう、絵画の全国統一価格案。
絵もメガネも、一目見ればそこそこ良さが分かるわけだし。

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 いやー、今日は、文化の日にふさわしい、いいブログでした
(こういうのが「自画自賛」で、値がつかんのです。しかも文化の日はもうフル~)。

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2008年3月11日 (火)

「ちゃんこ鍋」劇団・中島部屋公演

Dvc20182_2  中島真一という名前の男が、先日やってきました。
ぜんぜん太ってないのに、「中島部屋」というゲキダンの主催者だそうです。

 劇団ひとりというタレントさんがいますから、
中島部屋けいこ、っていう芸名もいいんじゃないかと思いましたが、男でしたね。

 その演劇集団・中島部屋が、けっこうな規模の演劇公演を行うそうです。
テーマは「家族愛」。
 ミュージシャンや衣装ブランド、ヘアメイクアーティストといった関係の人たちのコラボレーション、というのがウリということです。

 ジャンルを超えた、様々なアーティストのコラボということで、
要するに、いろいろなジャンルを混ぜ合わせたちゃんこ鍋を食べられるんだと思います。
この3月に新宿でちゃんこ鍋を食べたい人はぜひこちらから進んでください。

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スイートルーム~中島真一作品集
脚本★中島真一著■劇団・中島部屋の主催者が 贈る脚本集。あっと驚くスリラーから泣ける家族愛まで、ちょっとズレた人々の芝居話。
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2008年2月29日 (金)

そして自由は残った

Dvc20092_2  2月のある日、「風紋」という飲み屋に行きました。
粕谷一希氏の77回目の誕生日、喜寿の会が開かれたのです。
「5時から10時の都合のいい時間に」というその会には、
氏の知人や身内の方々が、入れ替わり立ち代り来られて、
年配の人を中心に声をかけられたようですが、
ずいぶんの数の人が集まりました。

 風紋というのは、新宿5丁目、御苑大通りから、
靖国通りに平行に走る医大通りに入ったすぐのところにあるバーです。
かつては文壇バーとして、
聞けば皆が知っている著名な作家や、また編集者たちが集まるバーだったようですが、
2回ほど引越し、いまは、こじんまりとした飲み屋、という印象です。

 写真はその入り口で、看板に見える「風紋」という文字は、
「田村義也という装丁家の字だよ」と、
帰り際に(ケータイ)カメラを構えていた私に、
やはり帰ろうとしていた作家の一人が、教えてくれました。

 硬派雑誌の編集長であり、また装丁家としても活躍した人だそうで、
見れば、あああのカバー、と分かる装丁です。

 昔の新宿は、一種の文化的なメッカだったそうです。
文化人や歌をうたう熱い人たちが集った「どん底」とか、うたごえ喫茶「灯(ともしび)」とか。
文壇バーがあるこの医大通りも、奥の方の曙橋にフジテレビがある栄えた時代もありましたが、
いまは、同じ医大通りのノアノアのマスターの言葉を借りれば「忘れられた商店街」なのでしょうか。

 靖国通りをはさんだ反対側は新宿の2丁目で、
通り沿いにあるベローチェは、オカマさんたちでいっぱいです。
店員のあっさりした感じと、「華やか」な声と、
時々はハメはずしますが節度はわきまえてます、という感じがあいまって
店内は、自由を絵に描くとこんな感じになるかもしれない、という雰囲気です。
自由を許す雰囲気が、新宿には残っているのではないでしょうか。

 どん底や灯があったころ、歌声喫茶や酒場で歌われたのは、ロシア民謡だと聞きます。
ある種、革命前夜っぽいノリを持った新宿は、体制側に対する、一種の自由空間だったのかもしれません。
 高校時代の世界史の先生が、ロシア民謡は暗いのに、訳された日本語の歌詞は希望に燃えていて明るい、
というような話をしてくれた記憶があります。

 「意訳」による文学的な新宿革命は起きず、
ロックの殿堂も、ジャズのライブハウスも、エロのメッカも、日本文化や経済に組み込まれてしまった中、
彼女たちが新宿の自由を受け継いでいるのかもしれません。

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2007年11月30日 (金)

新時代か原始時代か『あおぞらDEアート』

Dh000031  今回ブログでご紹介するのは、11月4日(h19)に銀座の泰明小学校・校庭で開かれた、銀座の画廊主催の現代アート展示会『あおぞらDEアート』(第3回)です。
天気は最高、気分も上々、子供が遊ぶ日曜の校庭もなんだかキューッ。
でも青空も校庭も子供も、この日ばかりはアートの引き立て役に甘んじたのであります。

 銀座の十五の画廊が引き連れてきた100余人のアーティストが出品、校庭いっぱいに広げられた絵と工芸品とオブジェ。
レベルは高いし、太鼓の鳴り物あり、似顔絵コーナーあり、造形ワークショップありと、様々な工夫をこらした催しですから、もちろん大勢の人が集まり、盛況のうちに閉幕したのであります。
でも、いやー、いいイベントでしたね、めでたしめでたし、では終わりません。
普通の展示会とは意味が違うのです。
これは銀座の画商が、しかも現代アートの画商が、売る意欲満々で開いた絵の販売会なのです。

 学園祭で美術系クラブがダラダラやっているのとはワケが違いますし、
学芸員が学術あるいは啓蒙を目的として行う美術館の行事ともリアリティが違います。
また、たとえつまらなくっても偉い審査員が入選を決めるナントカ展とも、切れ味が異なります。
一番違うのは、見に来る人の気持かもしれません。
それは天下の銀座の画廊が、いい、面白い、売れるだろうとふんだ現代アートを売る展示会ですから、安くて、いいコンテンポラリーをみつけた人にとっては、小学生のときに見た夢のような宝島だったでしょう。

 この「あおぞらDEアート」を企画したのは、銀座の画廊主の有志の人たちで、その中心はO(オー)ギャラリー(1丁目)のOさんです。
ご自身で「言いだしっぺ」とおっしゃっていますが、けっこうオヤブンなんでしょう。しかもオンナオヤブン。
彼女の掛け声に応えた形の K's Gallery(1丁目)、ギャラリー舫(3丁目)、十一月画廊(7丁目)、exhibit Live&Moris(8丁目)の5つの画廊がエンジンとなり、さらに10の画廊が加わって、この美術展が開かれたのであります。

 会は成功裏に終わりました。何をもって成功とするかはいろいろあるでしょうが、約2000人が入場(入場無料)し、何十枚もの絵を売った画廊もあったようです。
ま、一番盛り上がっていたのは、同じ絵でも、上の写真の「アート似顔絵プレゼント」でしたけど。

 ところで翌日、銀座のとある画廊で油を売っていたお客さんに、この展示会の話をしたら、
「そんなとこ、ぜったい行かないよ」と言ったあと、
「もし行ったら、何枚買っちゃうか分からないもの」と真顔でつけ加えていました。
なーんかい-感じの、やさしそーなおっさんでしたけど。
そう、絵画ファンって、見ただけでは、その情熱が分からないのです。

数千円のCDではなく、何万、何十万円もする絵を買っていくのですから、実はホットな人たちなんでしょうが、彼らはその情熱を外には出しません。
音楽ファンはヘッドホンを鳴らして歩くし、犬好きは、好きな犬を連れて歩き、ファッション好きなら、流行の色で身を包む。
でも絵画ファンは、自分が絵画ファンだということを主張しない。
まるで自分が絵の中に納まった肖像のように、静かです。

 それはもしかしたら、絵画、とくに現代アートは、抽象画に限らず、言葉にされるのを拒否しているからかもしれません。
何の絵かを言葉にできない、言葉が役に立たないので、こんな絵を持っている、と、人に自慢するわけにもいかない。楽しいということをうまく伝えられない。

 またカバンより大きな絵を持って歩くわけにもいかないから、その人の家に行ってみないと、絵を持っていることすら分からない。一緒に楽しめない。
でも集める。
楽しむときも、じっと黙って脳だけで楽しむ。
したがって絵画ファンは群れない、群れようがない。
それが、絵画ファン、とくに現代アートファンが、「静か」である理由なのではないでしょうか。

 デパートの展示会でよくやっていた印象派は、20世紀末の日本の饒舌なオバサンたちをひきつけるくらいに表現手法が新しかったけれど、言葉にできる人や景色といったものを描いていたという意味ではその彼女たちにとっても古典的な部類に入る、本当に古いものに、ついになったのではないでしょうか。

 人って、言葉がないと、集団になれないですね、きっと。
サカナにとっての外敵とか、狼がみんなで追いかける獲物といった、言葉でなくても共有できる価値だけを、みんなが同じ役割を演じて追い続けるなら、言葉なしでも集団になれるでしょうが、それは原始時代の話。まだ分業して集団を作る「人」にはなっていない。

 現代アートは、したがって、言葉を持たない類人猿が人になる前に持っていた、プリミティブなパワーを放っている、というのが今回のブログの結論です(まだるっこしー)。

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タイメラ~11のSF掌篇
SF短編小説集★矢野道子■主人公は何者かである、気持ちが分かる、だから読み進む。そんな常識をふっとばしてくれる楽しめる一冊。
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2007年7月 5日 (木)

出口裕弘氏、伊藤整賞を受賞

Deguchiyukoh 読者との交流と交感がいちばんの喜び。

1954年の6月15日、25才の出口裕弘氏は北海道大学の仏語講師として赴任した。
53年後のこの日小樽運河に近い小樽グランドホテルで第18回伊藤整文学賞の贈呈式が行われた。
昨年の受賞者島田雅彦氏の記念講演<考古学と小説>の後、
選考委員の選評につづき、小説部門が青来有一氏<爆心>(文芸春秋社)と
評論部門は出口裕弘氏<坂口安吾・百年の異端児>(新潮社)に
それぞれブロンズ像と副賞が贈られた。
 出口氏は伊藤整が英語教師を務めた同じ北大で9年間仏語教師として過ごしたことや紀子夫人が実家である北大正門に近い書店の前を通る伊藤整をよく見かけたなどのエピソードを交えて不思議な縁を感じると受賞の喜びを語った。
 また、三島、太宰、安吾と日本を代表する3人の個性的な作家を相手に独自の分析と日仏を見据えた広い文学的視野から“文学とは何か”という究極のテーマに迫ったユニークな力作として評価されている面も見逃せない。
 その上で氏の云う読者との間に文学における高く重いレベルで交流と交感が成立したことは重要である。
(今回のブログは、渡辺隆雄氏の取材によるものです)

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坂口安吾 百歳の異端児(新潮社)
評論★出口裕弘著■果敢な文学追求の道半ばで逝った、正体いまだ不明の愛すべき巨人坂口安吾が、生誕百年の今、現代に甦る!
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2007年5月23日 (水)

日本の始発は上野駅から

Dvc00369  夏を思わせるような五月の午後、新宿の南口にあるJR東日本本社ビルに男たちが集まりました。
目的は作家・出口裕弘氏の上野駅取材の同行。東京の変貌ぶりを新書にまとめる仕事なのだそうです。
JR東日本の方に上野駅取材のアポイントを取ると、なぜかまず新宿の本社に通されました。
でもその理由は、上野駅の改修の指揮を取った、JR東日本旅客鉄道株式会社の新井常務取締役(写真左)と面会すれば、何でもご存じの氏にお話を伺うことができるということだったのです。

 出口氏(写真右)が知りたかったのは、日本のあちこちで古い建物が壊されていく中、上野駅がその古さを保ちながら改修された、そのいきさつでした。
そしてやはりというべきか、そこには実際、こういう駅にするという設計思想があったのです。新井氏の話は以下のようなものでした。

          *          *

 空襲でも焼け残った上野駅ですが、90年代には300メートルの超高層ビル化計画もありました。これはバブルの崩壊で頓挫し、一方、地域全体の財産を残そうという意見も根強くありましたので、現在の駅舎を活用する計画をJRで作成し、東京芸術大学の先生に会って、意見を聞こうということになりました。
芸大は、日本を代表する大学であると同時に、地元の学校でもありますから。

 そこで芸大の宮田学長を訪ね、新しい上野駅についての構想を話しました。
すると「上野駅を壊す? いやいや、私はドイツに留学したときにホームシックになり、ドイツのターミナル駅にわざわざ行って、本を読み、心を癒していたんですよ、上野駅を思い出しながら。上野駅は、ヨーロッパの駅に似ているんです」
 これで、壊さないという駅の再開発の方向に理解を得、その方針のもと、プロジェクトチームが発足しました。

 しかし設計に入る以前に、様々な問題がありました。
まず、浅草vs上野といった、地域間競争に負けないようにすること。
それから「JRは駅という自分の商業施設を囲って、周囲の商店街を締め出すのでは」といった地元の不安を払拭すること。

 そこで地元の人や行政の人と一緒に町歩きをすることになりました。
15人もの一行で、上野駅の周囲を歩き、ここはこうする、こうしない、といった話を山のようにし、話し合いには地元のおもちゃ屋さんやカメラ屋さんにも加わってもらいました。

 その場ではっきり申し上げたのは、
「JR、地域、行政の三位一体による計画とし、JRも自ら積極的に計画を推進していく」ということでした。

 またこちらからも意見を言いました。
「お台場などとの地域間格差は、上野の人が、地元にあぐらをかいていたから生じたのではいですか?
JRだけでなく、行政や地元もしっかりしたスタンスを持ってほしい。変える努力をしてほしいんです」
「家族連れにリピータになってほしいのに、街が汚いままでは困ります。
上野には、動物園をはじめとして、親子の絆を保つ仕組みがあるのに、どうしてしっかりやらないんですか。私たちも必ず地域とともに歩いていきますから、頑張りましょう」
夜も、地元の人や宮田学長らと議論しているうちに、地域も力を出してきました。
そして最終的には地元の人たちにも納得してもらえました。

 しかし、これで設計に入れるかというと、そうは問屋が卸してくれません。
大店法(大規模小売店舗法)があったからです。
駅といっても、デパートと同じ商業施設ですから、改定された大店法の、おそらく第一号の適用が行われ、今度はJRの数人が数百人の地元の人たちに対する、という形で議論が行われました。
 この場でも、駅は鉄道のためのものだからデパートとは違う、とか、
駅の中を通行する人が街に行きたくなるように改札から街が見えるようにする、といった意見を申し上げ、皆さんに納得していただきました。
 大変な作業でしたが、ようやく1999年から工事を始め、ついに2002年2月22日のオープンにこぎつけたのです。

 そんなふうにして完成した上野駅はJRの商業施設の第一号としてとても注目されました。
ハードロックカフェやスターバックスも街中とは違うスキームで出してもらいました。
また宮田さんは「漆喰(しっくい)がもったいない」とおっしゃるので、カネがかかっても残すように言いました。
でも保存する、ということには、莫大なカネがかかるのです。壁画の保存のために足場を組むだけで数百万かかるんですよ。これには芸大と修復研究所が協力してくれました。

 またとくに女性トイレを増やしました。
従来、通勤時の男女比で決めていたので、男性用トイレが多かったんですが、一日を通して見ると、男女の比は同じです。そこで、女性用のトイレを増やしたんです。さらにパウダールームも作りました。
 その結果、女性の数がとても増えました。それにつられて男性も増え、皆さん、街中へも足を運ぶようになったのです。実際、改札を通る人が15%増えました。

 それまでJRは鉄道だけでやってきましたが、平成9年(1997年)に本社組織を改正して新たに「事業創造本部」を設置しました。そして「生活サービス事業」を「鉄道事業」と並ぶ車の両輪とし、サービス部門もJRを支える重要な位置づけをもらいましたので、今回の件は「サービス」側が「鉄道」を説得した形になりました。
 これは、道路公団の民営化でも活躍した松田さんや大塚さんが「これからは生活サービス」と言って説得してくれたことが大きいですね。

 時代を生き残っていくものが文化でしょうから、JRとして、文化をどう継承させていくか、ということを考えていきます。

          *          *

 新宿での取材を終え、上野駅に行って、その改修の前と後を見せていただき、アトレのタイ料理屋で食事をすませた一行は、古さと新しさが同居するその不思議な構造物に、日本の駅といえばみな同じ、というこれまでの常識を覆す形で戦後と21世紀をつなぎ合わせた人々の、生活を守りながらも前に進もうという心意気を感じたのでありました。
そして、この上野駅の改修によって、たしかに日本は大きく一歩、前進したのであります。
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東京人2月号(2007年)
月刊誌★特集「たてもの保存再生物語part2」国際文化会館/旧東方文化学院/旧安田邸・・・■小特集しみじみ、燗酒
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2007年1月21日 (日)

長い化け物の話--出口裕弘トークショウ

Dsc_0469 今回のブログは、先日行われた出口裕弘氏のトークショウについてです。

1月10日水曜日、東京は銀座の隣り、新富町も晴れ渡っていました。
年始の強い低気圧の風が少し残っていたでしょうか、でも夕方になってもさほど寒くない。

6時を少し過ぎたころ、「私は、東京の日暮里町で生まれました」、
そんな言葉で、出口氏の七十年以上の「都市の記憶」を出席者がなぞる試みが始まりました。
「東京は、昭和7年まで15区しかありませんでした。私が生まれた昭和3年は、日暮里町という町は、東京15区である『下谷区(したやく)』のちょっと北、15区の外だったんです。それは昭和7年に荒川区になりました」
「荒川区は、隅田川のこっち側ですが、同じくこっち側の浅草区や日本橋区とは比ぶべくもない。本所区や深川区は向こう側ですが、そっちの方がぜんぜんいいですよ。ちゃんとした江戸でしたから」

 明治11年に下谷区、浅草区、日本橋区、京橋区、本所区、深川区…の東京15区ができました。
この15区は、江戸八百八町を大よそそのまま、新しい行政区に繰り入れたもので、江戸そのものです。
このとき、日暮里町は下谷区のちょっと北、地図でいえば1ミリ上。つまり「江戸」ではなかったのです。
昭和7年、15区はそのままに、その外側に広がるように、荒川区、向島区、城東区などができて、合せて35区となりました。
さらに戦後すぐの昭和22年、浅草区と下谷区が台東区に、日本橋区と京橋区が中央区に、本所区と向島区が墨田区に、深川区と城東区が江東区に・・・という形で23区となりました。
ここで「江戸」の町名は崩れます。焼け野原とともに、古地図の中の記憶となります。

 自分が何者であるか。
このブログを書く私や、読んでいる皆さんは、物心がついたころからの記憶がかなりの程度一貫していて、自分というものを保っているわけですが、その記憶には、住む土地や風土、人々の生活が刷り込まれます。
自分を知るには、住んでいるところの記憶が欠かせないのです。
「そういやー札幌だったな。だから俺は味噌ラーメンが好きなんだ」みたいな。
免疫系や遺伝子とは別に、自分の好きなもの、嫌いなものの記憶が、自分自身でしょう。
自身を好きかどうかは別にして。

 でもその土地の歴史や風習は、口や手で代々教えてもらわないと分らない。記憶を持てない。
なぜそれが好きなのか。魅かれるのか。
したがって、敗戦でそれまでの好き嫌いの継承が断たれたあと、それ以前の自分を、私達は失ってしまいました。
かろうじて年配者の記憶に残っている自分を、今回の会のような機会になぞって、自分の記憶に移植し、自分をおぼろげにつかむ、という作業をする・・・。

 出口氏はボードレールの翻訳など、仏文学者としての名が一番通っているかもしれません。
しかしそれは氏の一面で、「京子変幻」を始めとする小説家でもあり、最近は三島由紀夫、太宰治、坂口安吾の独自の評伝を書いてきました。
 そして氏の、おそらくライフワークである「都市」、中でも東京。

「バブルの終わる頃まで、東京は拡大しました。いわゆる『東京もの』の本がいっぱい出ていました。
いったいこれから東京はどうなるんだろう。
でも、今では東京ものは本屋の店頭からすっかり消え、この数年は江戸ものがたくさん出ています。
要するに、東京は膨張をやめ、その内側を見直すようになったのです」

 たしかに。人口の都心回帰、丸の内や日本橋の新しい展開が実際に起きています。
日本橋の上の、断絶に寄与した、あの長いお化けも、あの世に帰るときが来るようです。

 でも、氏が語る東京も、まるで長い化け物のように見えます。
 生まれた「江戸」のはずれ、2・26事件のラジオと戦前、戦争、焼け野原と敗戦、高度経済成長、そしてバブル、その崩壊と失われる昭和、さらに都心回帰と新しい高層ビル群・・・。
そこに、9年間生活した札幌や、1年半歩き回ったパリの、演歌から切り抜かれたような青函連絡船や、さほど断絶しないですんだ石造りのヨーロッパの記憶を差しはさみながら、変貌を続ける東京を探検し続けた七十数年間を、氏は語ってくれました。

 長い記憶を持てるようになった生物は、生きのびるのに成功した後、より幸せになるために、自分探しを次の目標にするのかもしれません。
歳を重ねた人がそうであるように。また、ニホンウナギが次の世代を残すために、太平洋のスルガ海山に帰るように。
--伝えなくてはならない。残さなくてはならない--
そんなとき、バブルで古い町を、記憶を失い、若者を雇用しなかったために、技能の継承も危うくなった。
自分たちの記憶を失いかけた人々は、文明開化で断絶する前の江戸時代に、自分のルーツを求めた・・・。
 もしそれを再確認し、継承していく方法を見つけ、アメリカ以外の方向もみつけて、ハンバーガー以外を食べたり作ったりする記憶を持てる道がみつかれば、再び活気を取り戻せるかもしれません。
 そのためにも年配者は自分の記憶を、若者にどうしても伝えなくてはいけないのではないでしょうか。
でないと、新宿も池袋も有楽町もまったく同質のMACHIになっていく現在、私達は自分が何者であるのか分らず、いつまでもただ、おろおろするばかりです。

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関東取締出役 シンポジウムの記録(岩田書院)
解説★関東取締出役研究会 編(代表:多仁照廣)■文化2年に関東地域における無宿・悪党を取り締まるため、江戸幕府から任命された関東取締出役(しゅつやく・でやく)の実像に迫る。
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2006年10月21日 (土)

言葉が人を迎え入れる「言葉の翼」(幸敦子)・カリグラフィー詩画集

Dvc00119  今回のブログは、幸敦子さんのカリグラフィー作品集「言葉の翼」についてです。

 「カリグラフィー」はご存知ですか。
「西洋の書道」で、専用のペンを使って美しいアルファベットを書く技術です。でも日本の書道とはだいぶ違います。

 例え話ですが、同じ西洋由来のガーデニングは日本庭園の影響を受けたと聞きました。でも庭いじりという同じものでも、この二つの印象はだいぶ違います。ガーデニングの方が華やかですよね。
 印象としてですが、日本庭園では、幹や枝や葉も花と同じように鑑賞するけれど、ガーデニングは、花こそが主役という感じがします。四季の自然を庭に取り込むというよりは、花が目的。

 日本の書道と西洋のカリグラフィーでも、それと似たような印象を受けます。書道では、文字に装飾はつけない。筆の通る筋である文字自体を鑑賞し、その筆あとを見て、筋がいいとか、勢いがあるとか言うわけです。そこに、特別に飾りをつけて美しくするという考え方はない。つまり書道は、緑色や茶色の草木自体を味わう日本庭園と似ているように思うわけです。
 でもカリグラフィーのアルファベットは「線」なので、書道のように太い筆あとそれ自体を表現的にするのとは違い、どんな図形的な加工、装飾を加えるかが腕の見せ所、という感じです。
 草木の線に美しい花を咲かせて楽しむ。まさにガーデニングではありませんか。
 もっとも、カリグラフィーは修道院の写本で育まれたようですから、教会が美しくあるのと同様の意味があるのでしょうし、最も人間らしいものである「言葉」、それも自分を表す言葉に美しさという意味を持たせるところは、「愛」をもとにした考え方があるのかもしれません。

Unknown  彼女のエッセイによると、この「言葉の翼」は、そもそもあった十の言葉を、カリグラフィーにしたものだそうです。最初は「未=unknown」。

 『未というのは未知の未でもあるし、未来の未でもあるけれど、いずれにしても今はまだわからないという概念から選びました。
 私はあまり前向きに考えられるほうではありません。過去の失敗にいつまでもくよくよしてしまったり、まだ起きていない先のことを心配したり・・・
 そんな自分を戒め、励まそうと思いました。
 未来のことはまだわからないのだから、そんなことに心を砕くのはやめようと。それよりも今を精一杯生きよう、この瞬間を楽しもうと。そうすれば、先のことを心配する暇もなくなるし、positiveに物事を捉えられるだろうなと思いました』

 彼女は、自分を表わす言葉のひとつ「未」を描き、さらに詩画集にしました。それはそれまでの自分に区切りをつけて、さらに進むためのすてきな儀式のようにも思えます。

 日本では、いろいろなものを「~道」にして地道にやっていくのが基本なのかもしれませんが、日本人といえども女である側の人には、美しく着飾って今の自分を肯定し、過去の自分に区切りをつけていくという西欧流のやり方が、ひょっとすると合っているんじゃないでしょうか。
 そもそも美しさというものに無縁、しかも目も髪も黒一色の日本の男族には真似のできない流儀でしょう。

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2006年1月25日 (水)

粕谷一希&小野津幸子

1610_low2  新春、一月の半ば、寒気が少し緩んで晴れ渡った日の午前、東京は雑司ヶ谷にある、作家・ 粕谷一希氏のご自宅を訪問しました。今度、スピークマン書店で作るダイレクトメールに「推薦文」を寄稿していただいたのですが、氏の写真も載せようということになり、撮影しに伺ったのです。

 今度は、いつものような古いFOMAで撮るわけにもいかず、叔父のセミプロカメラマン・渡辺氏に同行してもらいました。

 ドアがあき、奥様の幸子さんに玄関で出迎えていただくと、後ろから粕谷さんが出てきました。「なんだか、おおごとになって」というようなことをおっしゃりながら奥の応接間に通していただくと、そこはかなり広い部屋で、山積みの本とソファが並んだ一角や、陽光が差し込む掘りごたつのある南側、むこうには大きな楽器が置いてある、そんな奥行きのある部屋でした。
 幸子さんは、「作家・小野津幸子」でもあり、スピークマンでも、作品を扱わせていただいています。

 一通りご挨拶をしたあと、何か話しながら写真を撮る、ということで、話をさせていただきましたが、粕谷さん、元「中央公論」の編集長、何かの拍子に中国の方へ話題がいったとき、静かな口調が一転したように思いました。

 デモの話、国家主席の話、環境汚染の話、反乱と革命の話・・・。

 いつもは、どちらかというと無口、という印象でしたので、少し驚きました。熱い人なんだ、と思いました。

 そうこうしているうちに、一通り撮り終わり、昔の楽しかった映画の話になりました。
エレオノラ・ロッシ・ドラーゴの「激しい季節」、三國連太郎の「江戸一寸の虫」、島田正吾の「六人の暗殺者」・・・と、粕谷さん、幸子さん、ともに古きよき映画を楽しげに思い出していました。

 小一時間ほどお邪魔をし、お礼を申し上げて、おいとましました。いい写真が撮れたと思います。
 言葉だけが、世界や昔を語れるのではなく、眼の前の今だけを切り取っているはずの写真も、その人の世界と過去を、すべて表現している、そんなふうに思いました。
 文法でいえば、「過去形」の何かでしょうが。

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